『呪術廻戦』に登場する加茂憲倫は、呪胎九相図の生みの親として描かれ、作中でも屈指の闇を抱えたキャラクターです。
この加茂憲倫は、架空の存在なのか、それとも実在の人物や歴史上のモデルが存在するのでしょうか。
この記事では、加茂憲倫と陰陽師「賀茂氏」の関係を中心に、呪術廻戦と日本史の交差点を深く掘り下げて解説していきます。
- 加茂憲倫は実在せず、賀茂忠行がモデルとされる
- 呪術廻戦の加茂家と賀茂家の共通点と違い
- 加茂憲倫や五条らに共通する出雲族の系譜
加茂憲倫は実在するのか?呪術廻戦におけるモデルとの関係
『呪術廻戦』に登場する加茂憲倫は、呪術界を揺るがす禁忌の術師として描かれ、多くの読者に強烈な印象を与えています。
特級呪物「呪胎九相図」の生みの親であり、非人道的な実験を行ったその姿は、作品内でも屈指の悪役とされています。
では、この加茂憲倫という人物は実在するのでしょうか?それとも完全な創作キャラなのでしょうか?
加茂憲倫という名前の人物は歴史に存在したのか
結論から言えば、歴史上に「加茂憲倫」という人物は存在しません。
日本史においてはこの名前の記録はなく、あくまで『呪術廻戦』の世界に登場する架空のキャラクターです。
しかし、このキャラクターの設定には明確な歴史的モチーフが存在しています。
それが、平安時代に活躍した賀茂忠行とその息子賀茂保憲の親子です。
モデルは陰陽師の祖・賀茂忠行とその息子・賀茂保憲
賀茂忠行は、平安時代の陰陽道を体系化した人物であり、日本における陰陽師の源流ともいえる存在です。
彼は有名な陰陽師・安倍晴明の師匠としても知られています。
その息子である賀茂保憲もまた陰陽寮で高官に就き、賀茂家の名声を引き継ぎました。
『呪術廻戦』の加茂憲倫は、呪術や術式の研究に没頭し、倫理を逸脱した存在として描かれています。
これは、歴史の中で陰陽師が神秘的かつ危険な存在と見なされていた背景と重なる部分があります。
つまり、加茂憲倫は賀茂忠行という実在した陰陽師の“ダークサイド”を具現化したキャラクターだとも解釈できるのです。
賀茂忠行が確立した陰陽道と呪術の変遷
『呪術廻戦』に登場する加茂憲倫は、呪術の研究と実践において極めて強大かつ危険な存在として描かれています。
その背景にあるのが、現実の陰陽道における制度や思想、そしてそれを体系化した賀茂忠行の存在です。
陰陽道は長らく日本における呪術・占術・国家祭祀と深く関わってきた体系であり、賀茂忠行の登場によって大きな転換を迎えました。
陰陽道三部門を統括した賀茂忠行の功績
賀茂忠行(かものただゆき)は、平安時代前期から中期にかけて活躍した実在の陰陽師です。
それまで分離していた天文道・暦道・陰陽道の三部門を統括し、陰陽寮における組織の中心的存在となりました。
その学識と呪術的知識は朝廷にも重用され、後に登場する安倍晴明にも大きな影響を与えたとされています。
このように国家に仕える公的な呪術師としての側面は、『呪術廻戦』においても加茂家の伝統に受け継がれており、加茂憲倫の原型に忠行の姿を重ねる考察は非常に有力です。
遣唐使廃止が陰陽道に与えた影響とは
賀茂忠行が活躍した時代は、ちょうど遣唐使が廃止(894年)された直後にあたります。
これにより中国からの最新の陰陽五行思想が流入しなくなり、日本独自の呪術文化が形成されていくことになります。
その結果、陰陽寮では道教や密教などの宗教的要素が取り入れられ、陰陽道が「術」から「信仰・呪術」へと変化していきました。
こうした流れは、加茂憲倫が術式の探求を深め、倫理を超えた実験にのめり込んでいく姿とも共鳴します。
呪術が“国家の技術”から“禁忌の力”へと変化する過程は、現実とフィクションが交差する重要な視点と言えるでしょう。
賀茂氏の系譜と出雲族とのつながり
加茂憲倫のモデルとされる賀茂家は、陰陽師として知られるだけでなく、その家系のルーツにも大きな特徴があります。
特に注目されるのが、賀茂氏の祖先が出雲族の血を引くという点です。
この系譜は、『呪術廻戦』に登場する加茂家や五条家、乙骨家とのつながりを考察する上でも重要な手がかりになります。
祖先・大田田根子が持つ神話的背景
賀茂氏の祖先とされるのが、古代神話に登場する大田田根子(おおたたねこ)です。
彼は第10代崇神天皇の時代に、国中に蔓延した疫病を鎮めるために召喚された祭祀の要人でした。
大田田根子は三輪山の神を祀るために選ばれた存在であり、神との交信役として重要な役割を果たしたとされています。
この神話的存在から賀茂氏が連なることは、賀茂家が“神とつながる家系”であったことを象徴しています。
五条家や乙骨憂太とつながる“出雲系”の系譜
大田田根子の系譜は、やがて大鴨積命(おおかもつみのみこと)に引き継がれ、賀茂君の姓を賜って賀茂氏として確立されます。
この流れをたどると、賀茂氏は出雲族の末裔とされ、出雲神話と深く結びついた存在だと分かります。
一方、五条悟や乙骨憂太の先祖である菅原道真も、出雲国造の流れを汲む家系であるとされており、
こうした繋がりから、五条・乙骨・加茂憲倫が“出雲系の血筋”という共通項を持つ可能性も考えられます。
フィクションとしての演出ではありますが、こうした設定は作品に深い神話的・歴史的リアリティを与えているのです。
加茂憲倫のモデルとされる賀茂氏との関係性まとめ
『呪術廻戦』に登場する加茂憲倫は、作中で非道な呪術研究を行った「最悪の呪術師」として知られています。
このキャラクターは架空の存在であるものの、その背景には実在した歴史的人物や家系の影響が色濃く反映されています。
特に注目されるのが、平安時代に陰陽道を確立した賀茂忠行や、その子・賀茂保憲との思想的つながりです。
加茂憲倫のように術式の探求に邁進し、倫理の一線を越えてしまう姿は、陰陽道が技術から呪術・信仰へと変化していく過程を象徴しているとも言えるでしょう。
また、賀茂氏の祖先とされる大田田根子に始まる出雲族の系譜も、物語に深みを与える要素となっています。
五条悟・乙骨憂太と加茂憲倫が同じ“出雲系”の血を引く可能性を想起させる点も、ファンの間で興味を集めています。
加茂家と賀茂家は、名称の類似にとどまらず、術・血筋・思想の面で多くの共通点を持っていると考えられます。
そのため、加茂憲倫というキャラクターは、日本の呪術史と神話の要素を融合させた象徴的な存在であると位置づけられるでしょう。
歴史とフィクションが交差する『呪術廻戦』の世界において、加茂憲倫の存在はまさにその核心を体現しています。
- 加茂憲倫は呪術廻戦の登場人物
- モデルは陰陽師・賀茂忠行と保憲
- 加茂家の設定は賀茂家が由来
- 陰陽道の三部門を統括した賀茂忠行
- 呪術が信仰・禁術へ変化した背景
- 賀茂氏は出雲族の血を引く系譜
- 大田田根子と崇神天皇の神話
- 五条家や乙骨家との血筋の共通点
- 加茂憲倫は歴史と神話を融合した存在

 
  
  
  
  
